海音寺潮五郎応援サイト 〜 塵壺(ちりつぼ) 〜

アクセスカウンタ

zoom RSS 海音寺潮五郎と司馬遼太郎『梟の城』編

<<   作成日時 : 2009/06/14 06:14   >>

面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 2 / コメント 2

海音寺潮五郎さんは講談倶楽部賞の選考会で、司馬遼太郎さんの『ペルシャの幻術師』を受賞作とするのに決定的な役割を果たしました。それから4年後、『梟の城』で直木賞を受賞した司馬遼太郎さんは確固たる文名を確立します。これぞ国民的大作家「司馬遼太郎」の出発点といえると思うのですが、ここでも海音寺潮五郎さんが司馬さんのために重要な役割を果たしています。しかし、その真相はあまり知られていません。例によって、ネット上には情報がありません。それを紹介しようというのが、今回のお話です。

直木賞の歴史に関しては「直木賞のすべて」というサイトに詳しい情報が掲載されています。司馬さんが受賞した第42回については「こちら」で選考委員の評価を知ることができます。

これだけを見ると、司馬さんの『梟の城』は順当に受賞作に選ばれたように思えますが、実はそうではありませんでした。選考に参加した吉川英治氏が『梟の城』を受賞作とすることを強く反対したからです。

ここから先は磯貝勝太郎さんの『司馬遼太郎の風音』から適宜引用しつつ紹介してみましょう。

 
昭和三十五年一月、『梟の城』を読んだ海音寺は、忍者のあやかしの世界と奇怪な行動を描いている文章には読者を興奮させ、酔わせるものがあると感じ、直木賞にもっともふさわしい作品だという自信をもって、選考会に出席した。選考がはじまると、意外なことに選者吉川英治が反対した。その記録は残っていないので、理由は不明である。


「直木賞のすべて」を見てもらうと分かりますが、この回で選考委員を務めたのは、欠席した大佛次郎氏を除いて8名。うち、第1回から選考委員を務めているのが吉川英治氏と小島政二郎氏です。
このお二人はほぼ同世代ですが、吉川氏の方が先輩。しかも、「吉川英治」といえば現在でも高い知名度を維持していることからも想像されるように、文壇で大きな力をもっていたようです。

その吉川英治氏が受賞に反対したのですから、司馬さんにとっては大変な逆風でした。他の委員は、吉川氏に対して積極的に反論しようとはしません。
そこで再び海音寺潮五郎さんの出番になるのですが、『司馬遼太郎の風音』から引用すると、

だが、その時のことを回想した海音寺は、つぎのように書いている。
「"どうして先生がこの作品をお気に召さないのか、ぼくにはわかりませんなあ。この人の作風はお若い頃の先生を髣髴とさせますよ"/とぼくが言うと、"だから、いやなんだ"と言った。その気持ちはわからないではなかったから、ぼくは苦笑して黙った。吉川氏はなおこう言った。/"この人は才気がありすぎる。歴史の勉強が不足だ。もっと歴史を勉強しなければ"。/ぼくは心中、/(先生よりたしかですよ。勉強しているだけでなく、自分のものにしていますよ)/と思ったが、それを言うわけには行かない。いろいろとねばったが、落ちるのではないかとはらはらした。しかし、吉川氏以外には買っている人が多かったので、ついに当選ときまった。いろいろな雑誌の小説の選者をしたり、直木賞の選者になってから十年にもなると思うが、こんなにうれしかったことはない」(海音寺潮五郎「司馬君との初見参」『三友』第六十号)


海音寺潮五郎さんの文章を孫引きする形になりましたが、直木賞選考会の様子はこれでほぼ想像できるでしょう。

吉川氏以外には買っている人が多かったので、ついに当選ときまった

とあることから、海音寺潮五郎さん以外の委員も『梟の城』を受賞作にふさわしいと考え、それなりの発言をしたことが分かります。

よって、海音寺潮五郎さん一人の力で司馬さんが直木賞をしたわけではありませんが、「吉川英治」という強敵と渡り合うために口火を切り、大いに説得に努め、選考会を『梟の城』受賞の方向に導いた功績は認めていいでしょう。

『ペルシャの幻術師』といい、『梟の城』といい、司馬さんの作品はよほど海音寺潮五郎さんの好みに合致していたと見ることもできるでしょう。そして、単に作風だけの好みに留まらず、海音寺潮五郎さんと司馬遼太郎さんはお互いの人柄にも相通ずるものがあり、作家としての多忙な生活の中にも、非常に親しく交際したということです。

画像


昭和44年 京都さくなぎ不動に家族旅行をした際の海音寺さんと司馬さん
海音寺潮五郎記念館誌 第17号より


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
面白い

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
司馬遼太郎: 梟の城
【覚書】★★★★★★★★☆☆ 第42回直木賞受賞作品 伊賀忍者の葛籠重蔵、風間五平、木さる。そして謎の女・小萩。それぞれの思惑が入り乱れる忍びを主人公とした小説。舞台となるのは、秀吉の晩年。 さて、... ...続きを見る
時代小説県歴史小説村
2009/06/14 08:59
犬山城
oojijisunです,青春18切符で行きます お城巡りを準備中です、参考になります。 ...続きを見る
青春18切符で行く,日本の「城」巡り39
2011/01/08 12:36

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いつも陰ながら拝読していますが、ここ2回分はとくに興味ぶかく読ませていただきました。
海音寺潮五郎さんの、文学賞の選考姿勢は(選評を読むかぎりですけど)はっきり、さっぱり、きっぱりしていて気持ちいいですよね。
P.L.B.
2009/06/15 11:08
P.L.B.さん、こんばんは。コメントありがとうございます。

今回の内容を書くにあたり、「直木賞のすべて」にはまたまたお世話になりました。ありがとうございます。

これは磯貝勝太郎さんの表現ですが、海音寺潮五郎さんは「直言型」の性格ですので、選評にもそれが現れているのでしょうね。
例の某池波氏の件でもそうですが、そこまで言うか!というほどですから。
モモタ
2009/06/15 20:39

コメントする help

ニックネーム
本 文
海音寺潮五郎と司馬遼太郎『梟の城』編 海音寺潮五郎応援サイト 〜 塵壺(ちりつぼ) 〜/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる