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zoom RSS 海音寺潮五郎『明治太平記』

<<   作成日時 : 2007/08/02 20:31   >>

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これまで読みに読んできた海音寺潮五郎さんの諸作品ですが、入手できずに未読だった作品のうち、『明治太平記』『明治太平記』が手に入りました。うれしい!ふと訪れた古本屋に置いてあったのですが、角川文庫から出版されたもので、昭和43年初版、昭和47年6版となっています。その当時の定価が\240で、それが古本屋では\262でした。税抜きで\250ってところですね。確かに古い本ではありますが、海音寺潮五郎さんの名作にしては安すぎます!

海音寺潮五郎さんは実に幅広く日本史の各時代を題材にした作品を執筆していますが、この『明治太平記』は明治維新から数年を経た頃を舞台にしている小説です。この時代を取り上げた海音寺さんの作品はあまり多くなく、今すぐには思い出せないほどです。

この『明治太平記』で中心的素材となっているのは、井上馨が起こした汚職事件である「尾去沢銅山事件」です。事件の経緯に関しては『悪人列伝』の「井上馨」に詳しく書かれていますので、誰でも知っているはずの話ではありますが、なぜかこの小説では、井上馨は本人としては登場せず、「井下」という名前で出てきます。あまりにも不自然なので、読んでいて、
 「あぁ、この井下というやつは、井上馨のことだ」
と余計に意識が集中する始末です。
単なる憶測ではありますが、井上馨はあからさまな悪役として小説に登場しますので、遺族・親族から苦情が来る可能性を考慮して、実名を避けたのではないかと思います。

この『明治太平記』は昭和26年に読売新聞に連載されたものですが、同時期の新聞連載小説は戦前の活気が戻りつつあった頃だそうで、巻末に収録された「解説」によると、
 朝日新聞には、山本周五郎と村上元三が、
 毎日新聞には、大仏次郎、土師清二、川口松太郎が、
 読売新聞には、海音寺潮五郎と大仏次郎が、
 東京新聞には、富田常雄が、
 時事新聞には、村上元三と山手樹一郎が

小説を執筆しているという状況だったそうで、「空前の時代ものブーム」であったとのことです。上記全てが同時進行だったとすると、村上元三氏、大仏次郎氏は同時に二つの新聞連載をこなしていたことになりますから、その人気ぶりが伺えるとともに、一流作家の仕事量の凄さも感じさせます。

ところで、海音寺潮五郎さんは後年の作になるほど、作品中に海音寺さん自身が顔を出し、歴史事実の説明や、歴史解釈についての解説をしているケースが多く見受けられますが、この『明治太平記』では、あくまでも登場人物に仮託して意見を述べる形式を採用しています。
ひとつ印象にのこった登場人物の発言箇所を紹介すると、

「人生は、やり直しはきかないのに、同時に、二つのやり方はできないのだ。同一条件下における比較が、できないのだ。わかるはずがないじゃないか。世間には、歴史上の人物を論じたりする時、あの場合、彼はこうすべきであったのに、そうしなかったために、あの悲惨な結果を見た、などと、もったいらしく論ずる者が多い。識者などという手合いは、多くそれだ。しかし、これはナンセンスだよ。歴史は、普通考えられているように、遠因、近因、動機、結果と順を追うて考えることのできるものではない。結果から、逆にしか眺められないものだ。結果が決まってから、原因が探されるものだ」

とあります。
わたしもそうですが、少し歴史を知ったかぶりをしている人は、確かにこの登場人物の発言のような傾向がありますね。自重しなければならないようです。
明治太平記 (1968年) (角川文庫)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
リンク貼らせていただきました。

近々、『列藩騒動録』に挑む予定です。
さっと
2007/08/04 12:51
さっとさん、こんばんは。リンクの連絡いただき、ありがとうございます。

海音寺潮五郎さんに関して言えば、絶版の状況は徐々に解消されつつあります。あの名作もそろそろ、という話が聞こえてきていますので、こうご期待です。
モモタ
2007/08/04 21:29

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