義将 上杉謙信
少し時期を逸してしまいましたが、放送中のNHK大河ドラマ「風林火山」に上杉謙信が登場したそうで、かなり好評だったとか、話題先行で意味のないシーンだったなどと、色々と論評されているようです。上杉謙信が登場する作品と言えば、海音寺潮五郎さんの『天と地と』なわけですが、意外と言うべきか『日本の名匠』の中でも上杉謙信について、海音寺潮五郎さんの深い思い入れを伺い知ることのできる作品、「高士上杉謙信」が収録されています。
その「高士上杉謙信」によると、海音寺潮五郎さんは以下のように上杉謙信を評しています。
一体、英雄とは、最も強烈な個性の人であり、功業の人である。だから、最も旺盛な我欲の人であるのが普通である。英雄にして道義の人は、古代伝説時代の禹王、湯王、周の文王、武王などは別として、歴史時代にはいってからは至って少ない。日本では維新時代の西郷南州以外にはぼくは知らなかった。西郷は英雄でありながら、同時に聖人たらんことを志していたから、功業の人でありながら、最も清冽な道義の人であった。ここがぼくの西郷好きの理由であるが、謙信を調べて、その人となりを知るにおよんで、
「ああ、ここにもいた」
と、実にうれしかった。
"義将・上杉謙信"と呼ばれる由縁がこの文章だけからも伺えると思います。
ところで、海音寺潮五郎さんが上杉謙信を主人公とする『天と地と』を執筆するに至った経緯については、こんな話が紹介されています。
この当時まで、川中島合戦のことを記述した文学は多数あったものの、そのほとんど全てが武田信玄の側から書かれたものだったそうです。これには江戸時代に起こった軍学ブームと、そこで重要視された「甲陽軍鑑」の影響が強いためだと推測されますが、海音寺潮五郎さんによれば
「作家には多少なり冒険家や開拓者の根性がある」
とのことで、
「人の踏みひらいた道は行きたくない、人の開拓した野は耕したくないという気持ち」
をもって、既に事績が有名になっている武田信玄ではなく、あえて上杉謙信の視点から川中島合戦に取り組んだのだそうです。海音寺潮五郎さんの高い志の一端がうかがえる逸話ですね。
さて、『日本の名匠』に収録された「高士上杉謙信」の"高士"についてですが、これは中国の易でいうところの"人間の至上位"のことだそうで、海音寺さんは、
今は民主主義の時代だが、高士が上位であることは変わりないと思っている。謙信や西郷は英雄にして高士を兼ねている人物だ。これは道義的人物というにも通じる。
単に英雄であるだけでは、ぼくには大したことには思われない。えらい人として相当には尊敬するが、仰ぎ慕うとまでは行かない。高士に対してはそれが出来る。英雄を兼ねていればなおさらである。
と書いています。海音寺潮五郎さんがいかに上杉謙信を高く評価していたかが分かる記述です。
大河ドラマの方も、年末に訪れるであろう川中島合戦に向かって、今後も盛り上がっていくことでしょう。行き先、楽しみですね。
その「高士上杉謙信」によると、海音寺潮五郎さんは以下のように上杉謙信を評しています。
一体、英雄とは、最も強烈な個性の人であり、功業の人である。だから、最も旺盛な我欲の人であるのが普通である。英雄にして道義の人は、古代伝説時代の禹王、湯王、周の文王、武王などは別として、歴史時代にはいってからは至って少ない。日本では維新時代の西郷南州以外にはぼくは知らなかった。西郷は英雄でありながら、同時に聖人たらんことを志していたから、功業の人でありながら、最も清冽な道義の人であった。ここがぼくの西郷好きの理由であるが、謙信を調べて、その人となりを知るにおよんで、
「ああ、ここにもいた」
と、実にうれしかった。
"義将・上杉謙信"と呼ばれる由縁がこの文章だけからも伺えると思います。
ところで、海音寺潮五郎さんが上杉謙信を主人公とする『天と地と』を執筆するに至った経緯については、こんな話が紹介されています。
この当時まで、川中島合戦のことを記述した文学は多数あったものの、そのほとんど全てが武田信玄の側から書かれたものだったそうです。これには江戸時代に起こった軍学ブームと、そこで重要視された「甲陽軍鑑」の影響が強いためだと推測されますが、海音寺潮五郎さんによれば
「作家には多少なり冒険家や開拓者の根性がある」
とのことで、
「人の踏みひらいた道は行きたくない、人の開拓した野は耕したくないという気持ち」
をもって、既に事績が有名になっている武田信玄ではなく、あえて上杉謙信の視点から川中島合戦に取り組んだのだそうです。海音寺潮五郎さんの高い志の一端がうかがえる逸話ですね。
さて、『日本の名匠』に収録された「高士上杉謙信」の"高士"についてですが、これは中国の易でいうところの"人間の至上位"のことだそうで、海音寺さんは、
今は民主主義の時代だが、高士が上位であることは変わりないと思っている。謙信や西郷は英雄にして高士を兼ねている人物だ。これは道義的人物というにも通じる。
単に英雄であるだけでは、ぼくには大したことには思われない。えらい人として相当には尊敬するが、仰ぎ慕うとまでは行かない。高士に対してはそれが出来る。英雄を兼ねていればなおさらである。
と書いています。海音寺潮五郎さんがいかに上杉謙信を高く評価していたかが分かる記述です。
大河ドラマの方も、年末に訪れるであろう川中島合戦に向かって、今後も盛り上がっていくことでしょう。行き先、楽しみですね。
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