海音寺潮五郎『幕末動乱の男たち』 その2

前回は海音寺潮五郎さんの「幕末動乱の男たち」に触れましたが、他ではお目にかかりにくい珍しい人物伝というだけでは、まだ興味を持ちようがないかと思いますので、中身を少しだけ紹介してみましょう。

以下は海音寺潮五郎さんの卓抜な時代観・人物観の断片に過ぎませんが、機会があればぜひ作品全体を読んで欲しいと思います。

"平野国臣"より:

しばしば書いてきたように、国臣の本質は詩人である。もし平和な世に生まれ合わせたなら、彼は文学者になる人であったろう。彼自身もそれは知っていた。こういう歌がある。
 君が代の安けかりせばかねてより身は花守となりてんものを
ここの花守が「美を作る人」ありいは「美の探究者」であることはことわるまでもないことであろう。


"武市半平太"より:

ぼくは半平太を一流中の一流の維新志士と評価しているから、半平太のためにおしまないではいられないのである。ぼくは維新時代の多数の暗殺の中で、井伊と吉田東洋の場合以外は是認することができない。この二つの場合は、除くよりほかに新しい時代をひらくことが出来なかったのだから、必要悪として認めるが、他の場合はその必要がないのだ。お調子ものの浅薄で残忍で不快な所業に過ぎない。


"小栗上野介"より:

小栗は蜷川新博士の著書が出て以来、大へん評判のよい人物になった。彼が幕府の末路において最も出色の人物であることは、言うまでもないが、ぼくは自分で調べてみて、博士の言うほどの人物とは思わない。博士は小栗の背後にいたフランス公使レオン・ロッシュのことを無視している。小栗の知恵はほとんどすべてロッシュの入れ知恵なのだ。それはよいとしても、全身的にロッシュによりかかっているので、日本のために非常に危険であったと思わずにいられないのだ。

いかがでしょうか。
これは人物伝中のごく一部の記述に過ぎません。その他、その人物を知り、その時代を知る上で非常に参考になる記述に溢れています。

この作品は海音寺さん自身が
 出来れば200人の人物伝を書きたい
と言っていたうちの12人です。(上下巻あわせて)
この「幕末動乱の男たち」には西郷隆盛、坂本竜馬といった幕末の二大巨頭は含まれていませんが、それでもこの本から幕末とはいかなる時代だったか十分に知ることができると思います。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック