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zoom RSS 海音寺潮五郎と司馬遼太郎『ペルシャの幻術師』編

<<   作成日時 : 2009/06/07 07:40   >>

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海音寺潮五郎さんと司馬遼太郎さんのただならぬ関係(いかがわしい意味ではありませんよ)については、両作家に多少でも興味のある方なら耳にしたことがあると思います。しかし、印刷された書籍類を別にすると、ネット上にはお二人の関わりあいについて、詳細な情報はほとんど存在しません。ネットの情報がいかに偏っていて不完全であるかの傍証だと思います。先頃、文芸評論家の磯貝勝太郎さんの作品『司馬遼太郎の風音』を入手したのですが、そこに詳しい経緯が描かれていたので紹介してみたいと思います。今回は『ペルシャの幻術師』編です。

この逸話については、以前、
 「ペルシャの幻術師を落とすとは何事か!」
と海音寺潮五郎さんが強引に受賞に導いたと紹介しました。寺内大吉さんが海音寺潮五郎記念館主催の講演会でお話された内容によったのですが、事実はこれほど乱暴ではなかったようです。

磯貝勝太郎さんの『司馬遼太郎の風音』に書かれているところでは、まず『ペルシャの幻術師』を執筆するきっかけをつくったのは寺内大吉さんです。寺内さんは司馬さんに同人雑誌の立ち上げを提案しますが、司馬さんはそれに興味を示しません。そこで寺内さんはある行動を起こします。

 
数日後、寺内から封書がとどいたので、開けてみると、同人雑誌が嫌いならば、世の中には懸賞小説というものがあるから、入選して、名を売っておいたほうがいい、という趣旨の手紙と、各雑誌の懸賞広告が入っていた。その懸賞広告のなかで、もっとも締め切りの早いのが『講談倶楽部』だった。送り手の温かい心にこたえるために、二晩で書きあげたのである。


ということで、『ペルシャの幻術師』がたった二晩で書かれた。しかも、それを『講談倶楽部』に応募したのは全くの偶然だったそうなのです。
司馬遼太郎さんの才能を世に知らしめるべく、寺内大吉さんは行動を続けます。続きを『司馬遼太郎の風音』から引用しますと、

 
第八回「講談倶楽部賞」の応募総数は、千十三編であった。講談社では社内選考による第一次、第二次の予選がおこなわれた。応募原稿を送った本人よりも寺内のほうが心配してくれた。彼がしっている講談社の編集者、川角剛に電話してきいてみると、第一次予選に入っていないというので、「ペルシャの幻術師」は、ぜひとも選考委員に読んでもらう価値がある作品だ、と伝えている。頼まれた川角が読みかえして、第一次、第二次予選にいれ、最終予選十編に残した。


ここにあるとおり、『ペルシャの幻術師』が認められ、司馬遼太郎さんが世に出るにあたって、寺内大吉さんが非常な後押しをしていることが分かります。そして、ついに『ペルシャの幻術師』は海音寺潮五郎さんの目に留まります。

 
ところが、選考委員会で五人の選考委員のうち、大林清と小島政二郎は、「ペルシャの幻術師」を当選作一編だけとすれば、ふさわしくないと主張し、源氏鶏太と山手樹一郎は、まったく評価しなかった。だが、海音寺潮五郎が、幻覚美を巧みに描き、大衆文学の幅をひろげる作品だとつよく推したため畷文兵の「遠火の馬子唄」と共に当選作となった。


すっかり引用が長くなりましたが、ご容赦ください。この逸話については、文藝春秋社のサイトにも似たような形で掲載されていますが、ニュアンスはかなり異なります。

画像


昭和31年、「講談倶楽部賞」授賞式の様子
前列左端が海音寺潮五郎さん、左から3番目が司馬遼太郎さん
海音寺潮五郎記念館誌 第16号より


今回の情報源『司馬遼太郎の風音』を書かれた磯貝勝太郎さんは、現在、海音寺潮五郎記念館・司馬遼太郎記念館の両方で評議員を務めています。これは生前のお二人と親交があったが故なのですが、特に司馬さんとは親交が深く、磯貝さんは司馬さんの逸話に大変お詳しい方です。
なので私は『司馬遼太郎の風音』に書かれた内容、つまり今回ここで紹介した内容の方が正しいと信じています。

講談倶楽部賞の受賞を契機に、司馬遼太郎さんは本格的な小説執筆活動を開始します。そして、その文名が決定的に確立するのは直木賞受賞によってですが、ここでもまた海音寺潮五郎さんが大きな役割を果たします。それは次回紹介しましょう。

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