|
海音寺潮五郎さんの作品で映画化されたものといえば、『天と地と』が何より有名です。映画に限らず、「映像化」という範囲で捉えると、『天と地と』は今年の初頭にドラマ化されたばかりですし、遙かに遡ると昭和44年にNHK大河ドラマとして1年間掛けて放映された実績があります。同じくNHK大河ドラマの「風と雲と虹と」は海音寺潮五郎さんの『平将門』、『風と海と虹と』の2作品を原作としていることは、このブログでも既に紹介しました。これらの実績は非常に有名で、その裏付けとなる情報も簡単に見つかるのですが、その他にも映画化された作品はたくさんあるようです。その一つが「南風薩摩歌」です。 海音寺潮五郎さんの「南風薩摩歌」は、西南戦争で薩軍の敗色が濃厚になりつつある時期を舞台に、薩軍を率いる猛将・逸見十郎太と料亭につとめる酌婦・お蔦との情愛の交流を描いた作品です。初出は昭和12年2月ということですから、非常に古い時代の作品です。 この「南風薩摩歌」が発表後まもなく、新興キネマで映画化されたのだそうです。監督に牛島虚彦、出演は市川右太衛門、鈴木五十鈴、月田一郎といった面々だったそうですが、私はもともと映画には疎いもので、それ以上にあまりにも古い時代の話ですから、これらの人々が名監督、名優であったのかどうかは全く知りません。 映画はかなりの良い出来映えだったようで、海音寺潮五郎全集第15巻の「あとがき」として海音寺潮五郎さんが書いているところによると、 わたしの作品はいくつか映画化されていますが、あれほどよい映画をつくってもらった記憶はありません。試写会の時、終って、ぱっと場内が明るくなりますと、わたしの席から数列前に浜本浩君がすわっていました。わたしを見つけると、人をかきわけてやって来て、 「おめでとう。いい映画だ。近年これほどの映画はない」 といって、わたしの手をつかんで痛いほどにぎりしめました。浜本君という人は感激家で涙もろい人でしたが、両眼にあふれるばかりに涙をたたえていました。 (中略) 米沢の尾崎周道氏は五山文学の学者として、また葛城北斎の研究家として、むしろ海外に有名な人ですが、その頃はまだ中学生で、映画に感激したあまり、わたしの原作を謄写版で刷って、友人に配布したと、わたしに語られたことがあります。 とあります。 今となっては確認すべもありませんが、映画としての出来がよかったのはもちろん、原作が優れた魅力を備えていたからこそ、見る人をこれほどまでに感動させたのでしょう。 さて、原作の「南風薩摩歌」ですが、一番最近では文春文庫から出ていた 『田原坂―小説集・西南戦争 (文春文庫)』という短編集に収録されていました。例によって、残念ながら、現在では絶版です。 何度かブログで取り上げていますが、西南戦争にまつわる話を中心に海音寺潮五郎さんの優れた短篇がそろった傑作ですので、もう一度日の目を見て欲しいところです。 NHK大河ドラマ「篤姫」の影響もあって、薩摩に注目が集まっていることでもありますし、今年の後半には何とかしてもらいたいところですね。 田原坂―小説集・西南戦争 (文春文庫)
|
| << 前記事(2008/06/15) | トップへ | 後記事(2008/06/25)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
原作者のそこまで言わしめた映画、さぞや素晴らしかったのでしょうね。 |
桃源児 2008/06/18 13:15 |
桃源児さん、こんばんは。はじめまして、ですよね? |
モモタ 2008/06/19 22:01 |
| << 前記事(2008/06/15) | トップへ | 後記事(2008/06/25)>> |