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zoom RSS 海音寺潮五郎『二本の銀杏』

<<   作成日時 : 2008/05/17 13:35   >>

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復活が続く海音寺潮五郎さんの作品群。主要な出版社の中で最も腰の重かった新潮社から『幕末動乱の男たち』が再出版されたことで、海音寺潮五郎さんの主立った作品はほぼ出そろうという喜ぶべき状態になりました。約2年前までの無惨な状況が今ではウソのようです。ここまで来ると、ファンとしての欲目もありますので、今度は逆に出版されずに残っている作品があることが不満になってきます。その最たるものが『二本の銀杏』です。

海音寺潮五郎さんは豊富な歴史知識と深い人間理解とによって、優れた作品を数多く残しており、それらの諸作品が持つ魅力は、今なお読者の心を捕らえて離さないものがあります。しかし、そんな海音寺潮五郎さんの作品のほぼ唯一の弱点ともいうべき要素を敢えて挙げるとするならば、それは作品が執筆された時期が古いということがあります。

ここ2年の間に復活した海音寺潮五郎さんの作品を見ると、その多くが史伝であることに気づきます。これは史伝というジャンルが持つ特質上、繰り返して読まれることを前提としている作品であることが復活の理由の一つなのですが、没後30年を経た海音寺潮五郎さんですから、作品が執筆された時期となると、
 「今を去ること半世紀
というものも珍しくありません。
その間の歴史研究の進展や、新史料の発見などで、海音寺潮五郎さんの史伝に書かれている内容が全く覆されるという事態が起こらないとも限らず、実際にそういう事例もあるかもしれません。

そのことがそのまま、海音寺潮五郎さんの史伝の価値を低下させるものではありませんが、
 歴史の真実をつたえ、それを人々の知識として結縁させる
という海音寺潮五郎さんの作品執筆動機に鑑みた場合、今となっては歴史的事実と異なる(かもしれない)内容が作品中に記述されている(かもしれない)ことは、海音寺潮五郎さんの作品評価上、マイナスになることはあっても、決してプラスではありません。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、海音寺潮五郎さんの作品中に明らかに誤った記述があると言っているわけではありません。少なくとも私はそうした事例を耳にしたことはありません。

ところで、小説(海音寺潮五郎さんの場合は、多くが歴史小説)の場合は、作品を通して表現しようとする内容が単なる歴史事実の伝達に留まらないため、作品誕生からの時間経過に依らず、その価値がいつまでも色あせないという特徴があります。
例えば、昨年から多くの読者を獲得している『天と地と』については、今ここで私がことごとしく説明するまでもなく、読めば誰にでも分かる魅力を有しています。そして、海音寺潮五郎さんの歴史小説を代表する作品として『二本の銀杏』があり、この作品こそ多くの人に読んで欲しいものなのです。

『二本の銀杏』がいかに魅力的な作品なのかについては、こんな逸話があります。これは文芸評論家の磯貝勝太郎氏が書かれていることですが、ある時、磯貝氏が司馬遼太郎さんに向かって、
 「『二本の銀杏』は傑作ですね」
と話をむけたところ、司馬さんは即座に
 「名作です」
と返答したとのことです。
なんと、私たちの読書意欲を刺激する逸話ではありませんか!今一度、歴史小説の持つ魅力を再確認したい人には、ぜひ海音寺潮五郎さんの『二本の銀杏』を読んで欲しいものです。
二本の銀杏〈上〉 (文春文庫)

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
「二本の銀杏」、大好きです。

いろいろ言いたいことたくさんあるのですが...とにかく、「二本...」と「平将門」を読んで、わたしはいままで読んでいた「歴史小説」が「歴史小説風読みもの」であった、と気がつきました。

これぞ「歴史文学」ですね。

特に「二本...」の「色気」にはやられました。

「小説家」として脂がのっていた海音寺先生の壮年期の筆力に比すれば、渡辺淳一センセーなぞヒヨッコですな。
Yute
2008/05/17 22:54
Yuteさん、こんばんは。

『平将門』のことは忘れたわけではありませんが、話の展開上、あえて触れていません。実は『平将門』は今でも単行本で売られているんですよね。

『二本の銀杏』の魅力を心底味わうには、ある程度の人生経験が必要なようで、この点については次回のエントリで述べようと思っています。私は「失楽園」は読んでいませんが、やはり海音寺潮五郎さんに軍配でしょうか。それほどの名作だということですね。
モモタ
2008/05/19 21:33
僕が言っても何も説得力はありませんが(笑)『二本の銀杏』は傑作です。僕も即座に言いますよ。

で、Yuteさんと全くの同意見で、『二本の銀杏』と『平将門』が海音寺潮五郎のいや、日本の歴史小説のベスト2であると、これまた即座に断言したいです。はい。
カマウチヒデキ
2008/05/20 01:36
カマウチさん、こんばんは。いつも、ありがとうございます。

これまで史伝だ!史伝だ!と散々言ってきておきながら、急に手のひらを返すようですが、やはり『二本の銀杏』ですよね。
もちろん『平将門』を忘れたわけではありませんよ。

で、実は正直に告白すると、私自身は『二本の銀杏』の魅力が理解できるまでに、少し時間が掛かったという話を次回のエントリでしようと思っています。やはり、ある程度の人生経験を積まないと理解できないことはあるもので(爆)
では、次回またお会いしましょう。
モモタ
2008/05/20 22:15
はじめてコメントさせていただきます。^^

今年は海音寺先生の著作を読破しよう!と思い立ちまして、こちらのブログとサイトには、たいへんお世話になっております。

わたしにとってはまさに衝撃だった「二本の銀杏」のエントリーが上がっていたので、なんだか居ても立ってもいられなくなってしまってROM専門を返上いたしました(笑)。

すごいですよね、この作品。
わたしは最初、こういう恋情の濃厚な作品とは思わなかったので、途中からはドキドキしながら読みました。読み終わったあとも、二日ばかりは作品世界から戻れずに困りました(笑)。
それにしても、海音寺先生は男性なのに、どうしてこう女性の気持ちがこまやかにおわかりになるのか、しかも読んでいて感情移入のあまりに身がよじれそうになるほどに説得力を持ってお書きになれるのか……。
いや、ほんとうにこの作品1作だけでも「よくぞ書いてくださいました」と先生にひれ伏したいくらいですが……。

しかしながら、この作品が復刻されていないのは驚きです(早く出せ!)。



かずほ
2008/05/22 00:08
かずほさん、こんばんは。はじめまして。

いつもこの拙いブログ、サイトを読んで下さっているとのこと、ありがとうございます。
やはり名作『二本の銀杏』!、みなさんからのかつてない反応に私も驚いています。

海音寺潮五郎さんはいわゆる「エロ」を描くのが嫌いで、そのことは自身の著作の中でも度々言及されています。よって、『二本の銀杏』でも直接的な表現はないわけですが、それでいてなお、これだけ魅惑的、刺激的な作品に仕上がるのですが、その筆力恐るべきですよね。

『二本の銀杏』は今でも文藝春秋社が版権を持っているはずですので、『武将列伝』の復刊が一段落するまでは再出版されないでしょうね。でも、今年の後半には可能性があるのではないかと、密かに思っています。

では、今後ともよろしくお願いします。
モモタ
2008/05/22 21:37

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